環境地図トークイベントを開催しました!/ Environmental Map Talk Event Held!

12月14日に4回目の環境地図トークイベントを開催しました。

今年は日本とマカオから13組の小中高生が参加する予定でしたが、マカオの高校生が急きょ参加できなくなり、オンラインでは12組での発表となりました。住んでいる地域も学年もさまざまな子どもたちが集まりましたが、地図づくりの楽しさや作品で工夫したところを紹介し合いながら、活発に意見が交わされました。

当日紹介できなかった発表への講評をまとめます。

環境地図トークイベント2024 ~13組の小中高生が語る~
研究会スタッフより

12月14日に行われた『環境地図トークイベント』において、素晴らしい発表をしてくださった発表者のみなさんに敬意を表し、研究会スタッフよりメッセージを贈ります。

第1部 ◇小学生◇  講評:福田 行高(環境地図教育研究会副会長)

小学生の応募は、今年も力作ぞろいで審査会でも選定に悩みました。そうした様子がトークイベントでも再現されました。

鶴沢さん兄弟は、玉川上水沿いに生育する草を調べてまとめました。草の名が大人もよく分からないのに、すらすらと発表していて脱帽しました。草が上水の南北どちら側に多いかを調べ、照度によるのではと考察しました。また、上水を斜めにレイアウトし大きく見せる工夫など、連続して応募している経験が生かされています。

大橋理子さんは、身の回りの古墳を調査しました。居住する守山区は名古屋市で古墳が最多とのこと。古墳の規模は意外にも小さいようです。形状は円墳とのこと。こうしたことは社会科では6年で学習します。付近の展望台に上り見渡して考察した結果、古墳を守っていきたいという気持ちにかられたとのこと。

水越美緒さんは、昨年に続いて身の回りの地図をベースに意外な事柄を表現しました。夏休みに20日間ほどかけて、石碑や案内板などを撮影し、一文字ずつ切り離してかるたとりのように並べ変え、なんと校歌の歌詞に再現して作品を完成させました。しかし、「鍛」「誓」のように看板などに少ない文字を収集するのに苦労しました。

足利千怜さんは、2025年の猛暑のなかでひんやりスポットを調査しました。クーリングシェルターとクーリングスポットという呼称があることに疑問を抱いて調査し解明しました。地図に表現していくと駅付近に集中し、シールでの表現に苦労しました。また、吉祥寺駅の周囲が武蔵野市、三鷹市、杉並区にあり、調査に時間を要したそうです。

水越周さんは、自宅の周辺でみられる生き物をくまなく調査しました。猛暑でさぞ苦労したのではないか、という審査委員の感想は取り越し苦労のようです。生き物を探すのが大好きとのことです。そうした作品に「美術館」というタイトルをつけました。2年生とは思えない感性の豊かさにビックリします。

第2部 ◇中学生◇  講評:大野 新(環境地図教育研究会幹事)

中学生の応募は例年点数が多く、力作ぞろいです。今年もすばらしい作品が寄せられました。トークイベントの発表もよくまとまっており、みなさんの環境地図にかける思いが大変よく伝わる発表でした。ありがとうございました。

山﨑雅将さんは、小学校3年生の時に地図記号に出会ってから地図に興味を持ち、地元富山県のことを調べてきました。その積み重ねが今回の地図にも表れていました。循環型の経済をめざして活動しているところを直接取材して、地図にまとめました。「だれかのためになる地図づくりをめざして」という言葉が印象的でした。

濵田南々美さんは、最近全国的に問題となっている地面の陥没をきっかけに地元の道路のひび割れについて調べました。周辺の道路を丹念に歩いて、ひび割れを大きさ別に分けて、色分けをしてまとめました。調査範囲の中には過去に実際に陥没した場所もあったようです。地域の問題を実際に歩いて確かめたよい作品となりました。

久米結子さんの作品は、環境地図作品展のこれまでの作品の中にもなかったユニークな作品です。第二次世界大戦後の混乱期に起こった帝銀事件を題材に、その痕跡を地名からたどった作品です。駅名には残っていますが、町名には残されていない中で、いまだに町の名前が建物名に残っているかどうかを調べました。また、比較として近くの町の地名がついた建物との割合を調べました。地名が地域の歴史を表していることを考えることができる作品となりました。

齊藤彬さんは防災をテーマにした避難場所の地図を作りました。ハザードマップなどにも避難場所が表示されていますが、市区町村単位で作られている場合が多くなっています。行政地域が接していて、利用者が多い駅周辺の避難場所が一目でわかる地図を作りたいという動機がもとになっています。発表の中の「人のための環境地図」を作りたいという言葉が印象的でした。

光山翠織さんは、道路交通法が改正され、自転車走行に対してより厳しくなった環境を地図にしました。狭い道では自転車と歩行者の接触が起きやすいため、事故の発生地図をもとにして、道路の安全性を表す地図を作りました。工夫した点はイラストを入れてわかりやすくしたことで、とくにピクトグラムを導入してわかりやすくしたことです。自分で歩いて周辺の道路の安全性を調べた地図となりました。

今回5人の方から発表がありましたが、みなさん地図づくりにかける思いが強く、それがよく伝わってきました。来年もぜひ地図づくりに取り組んでください。期待しています。

第3部 ◇高校生◇  講評:小野寺 徹(環境地図教育研究会顧問)

○北海道知事賞(北海道旭川西高等学校2年)高石美春さん・宇佐美真佳さん・嶋貫莉子さん

「待ち時間を有効に!! 道草マップ」
いつもの場所から始まる大発見!
旭川西高校の「道草マップ」の発表は、本当にドキドキするような、素敵な「問い」から始まっていました。
みなさん、バスを待っている間って「暇だな〜」って感じませんか?誰もが経験するこの「バス待ちのヒマ」という課題を、このマップは「地域のおもしろい場所を見つけるチャンス!」に変えてしまったんです。
特にすごかったポイント!
お店や説明文をマスキングテープでつなぐなど、見ている人が「ただ待つ」のではなく「どうやって楽しく過ごせるか」に焦点を当てた工夫が、とっても利用者目線でしたね。制作中に自転車がパンクするというハプニングがありながらも完成させた姿勢は、地域を調べようという強い気持ちの表れです。
実際に自分の足で歩いて、新しい場所を発見する経験――これこそが、最高の「生きた」学習ですね。
レイアウトも工夫満載
地図は情報を伝えるための道具ですが、その「伝え方」が工夫されていて、みなさんがこのツールの本質をしっかり理解している証拠です。

○国立環境研究所理事長賞(早稲田実業学校高等部1年) 竹下雄惺さん

「丸の内 猛暑でも人が集まる屋外空間の秘密」
科学の力で「なぜ?」を解き明かす!
早稲田実業の竹下さんの発表は、地理の勉強の中でも特にレベルの高い、プロの研究者がやるような分析に挑戦していて感動しました。
「猛暑なのになぜ、あんなに人が集まるのだろう?」という難しい問いを解くために、彼はただ「涼しいから」で終わらせませんでした。
分析のすごいテクニック!二刀流の分析
「体感温度(SET)」という、人が実際に感じる暑さを科学的に表す難しい指標(物理的指標)と、「観光資源」という街の魅力(社会的要因)を、2つ合わせて考えるという、非常に高度な分析をしました。
徹底的な調査
30脚もあるベンチについて、2日間かけて、7つもの項目を徹底的に調べ上げるという粘り強さ。集めたデータをわかりやすい表にまとめる工夫も、「客観的に正しい情報を伝えたい」という気持ちの表れです。
自分でツッコミを入れる力:調査でわかったことだけでなく、「ここが課題だ」「次はこう改善したい」と自分で指摘する力は、批判的思考といって、研究には欠かせない、本当に素晴らしい姿勢です。
「データがすべて」という教訓
4年間応募し続けた経験から、「人の意見」ではなく「数字で示せるデータ」を集めることの大切さを学んだという言葉は、社会を調査する上での最も大切な教訓です。

○2つの発表に共通する大切なこと

2つの発表には、住んでいる地域もテーマも違っても、共通する一つの大切な行動が流れています。それは、「地域を自分の足で歩く」ということ。
机の上で考えるのではなく、現地に出て、五感をすべて使い、自分の目で見ることで「なぜだろう?」という疑問(問い)が生まれます。
旭川西高校の皆さんは「居心地のよさ」を、竹下さんは「快適さ」を、何とかして数値や地図で伝えようとしました。この「歩く→問いを立てる→検証する」というプロセスこそが、みなさんが地域を深く理解し、未来を考えるための最高の学びの道なのです!

トークイベントの模様は、12月31日までYouTubeで公開してます!

発表者の皆さん、参加してくださった皆さん、ありがとうございました。